少子高齢化対応先進国へ ―「自分で守る健康社会」の理想と実現

少子高齢化の課題の本質とは

本邦は、今後数十年にわたり総人口が8000万人程度まで減少するにも関わらず、高齢者人口は4000万人のまま推移すると予想されている。このような未来に、「病気になったら病院に、若者が高齢者を支える、高齢者医療費を削減したい」という従来の発想では、国家財政は破たんする。持続可能な社会を構築するためにはラディカルな発想の転換が必要である。

ヒトが最期を迎える際にかかる医療費はほとんど変わらないと試算されており、医療費の増加分の多くは介護によるものである。したがって重要なのは、単なる寿命ではなく健康寿命である。本拠点では、将来ニーズを、「自分の健康は自分で守る、高齢者も社会に貢献する、新たな医療産業を興して社会生産性をアップする」ことであると捉え、これらを実現するための研究開発を展開している。

「自分で守る健康社会」
国民の自分ごと化の定着へ

上記の将来ニーズを踏まえ、本拠点のコンセプトを「病院を外来に、外来を家庭に、家庭を健康に」と設定した。入院・通院をドラスティックに減らし、家庭で過ごす時間を増加させ、新健康医療産業を振興することで、健康寿命を延伸し、社会生産性を向上することができる。上記のコンセプトに基づき、「健康医療ICTオールジャパン標準化、予防・未病イノベーション、ユビキタス診断・治療システム」の3グループを設けて、具体的な研究開発を推進している。

図1 自分で守る健康社会

 

健康医療ICTオールジャパン標準化では、最先端の疾患科学に基づき診療を行っている東大病院電子カルテに蓄積した個人情報、投薬情報等の臨床治療情報、生活情報等の既存データの利活用を図り、生活習慣病・認知症・慢性腎不全・免疫疾患などのゲノム・バイオマーカー等の新規データベースを構築する。また、最先端の疾患科学に基づき新規データベースを評価し、電子カルテ(個人情報、臨床治療情報、生活情報等)と統合することにより、健康・医療データプラットフォームを構築する。

さらに、他のCOI拠点とも協力しながら、国家規模の健康・医療データベース構築を目指す。将来的にはユビキタス診断・治療システムの開発で取得される画像などのデータも統合し、身体から臓器、組織、細胞、分子へと生体情報の拡大・縮小が可能となるパワー・オブ・ボディ・マップの実現を目指す。このような国家規模の健康・医療データベースの実現により、人は誕生から乳幼児期、若年・成長期、成熟期、老齢期と変化する自身の健康・医療ログを蓄積することができる。

この健康・医療ログは個人の健康長寿に活用されるばかりでなく、次世代に引き継がれ蓄積されることにより、健康長寿社会を低コストで実現するための資産となる。健康医療ログはスポーツ、食品、アパレル、保養、企業の健康管理、保険、介護など様々な産業でも利用され、安価で上質のサービスを生み出す基盤となる。

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