分析、発想、記録を使い分けよ ビジネスモデル創造の正しい技法

多くの人に読まれた書籍『ビジネスモデル・ジェネレーション』(BMG)たが、実は、それは万能ではない。BMGをフル活用するには、どうすればいいのか。ビジネスモデル創造のためのアプローチ、適切なプロセスを解説する。

今、起業のためのワークスペースが増えてきている。そのオフィスに入ってみると、必ずといってもいいほど置いてある書籍がある。オスターワルダーとピニュールの『ビジネスモデル・ジェネレーション』(BMG)(翔泳社)だ。

この書籍の言葉やフレームワーク「ビジネスモデル・キャンバス」は、世界の起業家の共通言語になりつつある。しかし、購入した当事者に聞いてみると、「読んでみてもよくわからない」と言い、フル活用できているという印象を受けない。

一つには、これがそもそも絵柄付きの事典のような書籍なので、自学自習に向かないからだろう。読んで理解する本というより、実際のワークショップを通じて理解する本という感じがする。

しかし、BMGは、単なる絵柄付きの書籍ではない。ビジネスモデルを創造するのに必要な考え方をスタイリッシュに盛り込んだ指南書である。ビジネスモデルを創造するアプローチは、大別して2つある。一つは分析アプローチで、もう一つは発想アプローチである。言葉は違うにしても、BMGにはこれらのエッセンスがすべて含まれている。

分析アプローチでモデルを改善

分析アプローチというのは、ビジネスモデルを構成する要素を一つひとつ分析・分解して組み立てて行くという方法だ。通常は、ビジネスモデルの現状分析から始まり、課題が抽出される。そして、その課題を丹念に潰していくことで、より良いビジネスモデルを描こうとする。

分析については、何を起点にするかでさらに2つに分けることができる。お客さまのニーズを徹底的に分析することから始めれば、マーケティングの分析になるだろう。市場調査、顧客観察、フォーカスグループへのインタビューなど、さまざまな手法があるが、これを起点にして、ビジネスモデルの構成要素を埋めていく。

一方、業界の分析や競合他社を起点にすれば、それは戦略的分析となる。競争が緩やかで利益を上げやすい業界はどこか。同一業界内でも競合が存在しない領域はあるのか。自社の経営資源で価値があって、希少で模倣困難なものは何か。このような分析から軸足を定め、ビジネスモデルの要素を埋めて行くことができる。

分析アプローチの難点は、適切な課題設定が難しいという点だ。安直な対処では、現状の改善にしかならず、革新的なビジネスモデルの創造には至らない。

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