過疎地再生実験の成否に注目 徳島の「強み」と「弱み」

高齢化によって「関西の台所」としての地位が揺らぎ、観光でも苦戦が続く徳島県。一方で、県内各地で過疎地再生のモデルケースが生まれ、注目を集めている。徳島県の課題とポテンシャルを分析し、今後の成長の可能性を探る。

「彩事業」で注目される上勝町。過疎地再生のモデルケースが県内から多く生まれている

長期的な人口減少(特に社会減)、住民の高齢化率(特に後期高齢者比率)の上昇、地域の過疎化・限界集落化。結果としての共同体の崩壊、地場産業の衰退。

これは、多くの地方自治体が抱える共通のテーマである。その解決に向けて、企業など民間を中心とした取り組みがしばしば独自の成果を挙げている一方、「県」として大規模な“社会実験”を行い、全国的な注目を集めているところがある。それが徳島県だ。

豊富な1次産品、観光業は不振

徳島県は、8市、15町、1村からなり、人口は75万9千人で全国第44位、面積は36位。人口千人当たり県民総生産額19位、同県民所得17位であり、比較的豊かな地域と言えよう。

実際、長い間、鳥取県と共に「関西の台所」と呼ばれ、豊かな農水産資源の産出で知られてきた。特に近年は、高速道路網などの社会基盤整備が進んだことで、徳島市からの時間距離も、神戸(1時間30分)・大阪(2時間)・岡山(2時間)・松山(2時間50分)と大幅短縮。関西への1次産品供給は、“一見”、より盤石である。

2次産業に関しては「化学工業」が全売上の3割以上を占め、占有率では全国第1位。「包装・荷造り機械製造」の占有率も同様に1位である。しかし、(業種を問わず)県内企業の99・9%が中小零細企業というのが顕著な特徴であり、総じて、産業基盤は脆弱だ。

稀有な例外が、日亜化学工業、大塚製薬工場(国内外150社の大塚グループの源流企業)、四国化工機などである。県としては特に、日亜化学工業に代表されるLED関連事業を「地場産業」「地域資源」と位置付け、その活用を志向している。

「LEDバレイ」(産官学共同プロジェクト→2010年に関連100社集積完了)がそれであるが、果たして、今後数十年にわたって徳島県の中核を担う一大産業に成長し得るかどうか、その真価が問われるのは、これからであろう。

また、同県は、阿波踊り、鳴門の渦潮、大歩危・小歩危・かずら橋、阿波人形浄瑠璃、ドイツ村公園(第1次大戦時の板東俘虜収容所、ドイツ軍捕虜によるベートベーン第9のアジア初演地)など、多様かつ強力な観光資源を有することでも有名である。

ところが、ホテル軒数全国第47位、旅館軒数33位など、観光振興への取り組み不足が祟り、宿泊者数(2014)45位、外国人宿泊数(2014)45位と、県の観光業は不振を極めている。

上記の高速道路網開通によって、「日帰り客」が中心となったほか、遠来の観光客も、徳島県を観光後、香川県などに宿泊する傾向が顕著となり、県観光業の置かれた状況はよりいっそう厳しいものになっているようだ。

以上のような同県の状況を鑑みるに、やはり、県経済における「関西の台所」としての1次産業の重要性を再認識させられる。ところが、その1次産業にも危機的事態が忍び寄っている。

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