自治体レベルでの適応策―「気候変動適応社会」に向けて

求められる地域に根ざした適応

気候変動やそれがもたらす異常気象の増加は、災害、エネルギー、水資源、食料、生物多様性など人間社会の様々な側面に影響を及ぼす。2000年以降、緩和と適応を融合した気候変動への取組みが世界的に活発になっている。

例えば、英国、ドイツ、米国などの先進国では、IPCCへの貢献も考慮して、自国における「気候変動の影響と気候変動への適応」規定を策定し、適応に関する独自の検討を進めている。自治体レベルの計画も策定され始めた。気候変動の影響に適切に対応していくために、地域社会の実態に即した自治体レベルでの取組みが必要不可欠である。

しかし、気候変動による地域生活への影響は、地域の特性によって異なってくるため、自治体が科学者などと協力し、市町村単位で気候変動の影響リスクを同定・評価する必要がある。自治体の政策立案者が不可逆性、不確実性、長期継続性、地域性および多様性という気候変動問題の特性を踏まえ、地域に根ざした適応策を策定することが地域社会に求められている。

地域によって異なる気候変動の影響

2014年の世界の年平均気温は1891年の統計開始以来、最も高い値となった。気象庁の気候変動監視レポート2014(気象庁、2015年7月)によれば、都市化の影響が比較的少ないとみられる気象庁の15地点を対象に、1898~2014年の年平均気温のデータ解析から、100年当たり1.14℃の割合で上昇していることがわかった。

季節別には、それぞれ100年あたり冬は1.08℃、春は1.29℃、夏は1.06℃、秋は1.19℃の割合で上昇している。農業は気候変動の影響を最も強く受ける分野であるといえる。図1は水稲生産に大きな影響を与える全国の6~9月の平均気温の平年偏差を示したものである。

全国で、特に2000年代から夏季の高温による水稲品質の低下(一等米比率の低下)、コメの収量・品質の変化の影響の範囲は、好影響も含め全国に及び、我が国の主食としての供給および農業従事者の収入の増減に直接影響する。また、野菜では夏の高温により花粉の機能障害によるトマトの着花・着果不良、果樹では夏の高温によるリンゴの着色不良やミカンの日焼け果の発生が報告されている。

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