面積の9割以上が森林の智頭町、過疎のまちを変えたアイデア

面積の9割以上を森林が占める智頭町。寺谷町長の「聞く力」が、町民から画期的なアイデアを次々と引き出し、先進的なまちづくりを実現させている。

智頭町は、面積の93%が山林で、人口約8000人の小さな町。森林は大切な資源であり、智頭町は、森と人々のつながりを培う「森のようちえん」や「森林セラピー」によるまちづくりを進めている

――地方創生がうたわれ、地域間の競争が激化する中で、智頭町の「強み」はどこにあると考えていますか。

寺谷 智頭町は、面積の93%が山林です。国内林業の低迷とともに、町も次第に元気を失っていきました。

しかし、お金がないからと言って、何もしなければさらに衰退を招くばかりです。お金がなければ知恵を出せばいい。ただ、残念ながら、私にも町の職員にも、いい知恵がありませんでした。そこで、2008年に町民141人が参加した「智頭町百人委員会」を立ち上げました。そこから出てきたアイデアの一つが、「森のようちえん まるたんぼう」です。

私は、山林が教育のフィールドになるとは思っていませんでした。「森のようちえん」は、東京出身のお母さんが「こんなに緑に囲まれた町で、子育てできるなんて最高」と言ったことがきっかけです。雨の日も雪の日も、山の中で遊ぶ子供たちの様子が全国と世界160ヵ国に放映され、子供を「森のようちえん」に入れたいと、全国から、そして海外からもご家族で移住して来られる人がたくさん出てきました。

ほかにも、移住者のアイデアをきっかけに、町内で大麻栽培を2012年から始めました。麻はかつて日本国中で栽培されていましたが、今は法律で厳しく規制されています。智頭町ではIターンしてきた若者が、地域と町、県知事のサポートを得て、戦後初めて鳥取県で大麻栽培免許を取得しました。麻薬成分のない安全な品種を栽培し、まちおこしにつなげようと頑張っています。

智頭町の「強み」は、いろいろな意見を吸い上げて次々とチャレンジできることです。良い知恵があれば、それを実現させるために直接予算をつけます。責任は私が持つから、「良い知恵を貸してください」と言っています。

寺谷誠一郎(智頭町長)

町のため、反対にも屈せず

――前例のない施策に挑戦するにあたり、反対の声はないのですか。

寺谷 もちろん、反対の声はあります。「森のようちえん」でも、「なぜ町立の保育園があるのに子供を山に行かせるのか」と言われました。どんどん意見を言ってもらえるのは良いことですが、ときには聞く耳を持たずに突っ走る姿勢も大切です。

「森のようちえん」は、北欧発祥の幼児教育。決まったプログラムはなく、寄り添う保育士たちは、一人一人のペースや興味を尊重。園児たちは森で自由に遊ぶ

私は常々、町の職員に「『3つの目』を持ちなさい」と言っています。一つは、高い所から見る「タカの目」。高い所を飛ぶと、遠くまでよく見えます。タカの目で、これから日本にどういう風が吹くのかを見極める。

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