長野県・阿部知事の構想 「健康長寿」をあらゆる産業の礎に

ものづくり産業の集積や、豊かな観光資源と一次産業など、多様な資源を持つ長野県。これらに「健康長寿」の強みをかけ合わせ、既存産業の活性化や新事業創出を目指す――。阿部守一知事に、長野県の成長戦略を聞いた。

阿部 守一(長野県知事)

―長野県ならではの地域の特色やポテンシャル、課題をどのように見ていますか。

長野県には世界に誇れるものがたくさんあります。まずは、健康長寿県であること。単に日本一であるのが素晴らしいのではなく、このことが信州の地域力の集大成だと考えています。医療機関と市町村、あるいは医療機関どうしが連携し、保健補導員や食生活改善推進員などのボランティアが活躍するなど、地域や住民自身の健康づくり活動が盛んですし、農業と一体化した暮らし方があり、高齢者の就業率が高くいつまでも元気で働いている人が多い。勤勉な県民性によるところも大きいと思います。

そして、豊かな自然環境と景観に恵まれています。山と森は長野県の価値を高める大きな要素で、昨年「信州 山の日」を制定し、山岳高原観光の振興や森林・自然エネルギーの活用を進めています。

さらに、教育熱心で勤勉な県民性があります。かつて寺子屋の数が日本一だったとか、人口当たりの美術館や博物館の数が日本一だということもありますが、勉強熱心で教養に優れた人が多いと感じます。近年は全国学力テストの結果があまり芳しくないため、もはや教育県ではないと言われることもあり残念ですが、これから教育再生に取り組んで行かなければならないと考えています。

このように素晴らしい資源はたくさんあるのですが、まだまだ活用しきれていないことが課題です。信州に暮らす人がその魅力を認識し、誇りと愛着を持てる地域を自ら創造していけるよう、そして県外・国外の人が行ってみたい、住んでみたいと憧れる地域にできるよう、県民のみなさんと一丸となって取り組んでいく必要があります。

3つの分野に重点を置き製造業を成長産業にシフトする

―成長産業の育成をどのように進めていきますか。

長野県は伝統的にものづくり産業で発展してきた県であり、今後も製造業を成長分野へシフトさせていく必要があると考えています。そこで注目しているのは、(1)健康・医療(2)環境・エネルギー(3)次世代交通の3つの分野です。

まず健康・医療では、県は長野県テクノ財団、信州大学等と連携し、次世代を担うメディカル関連産業の振興を図っています。メディカル分野に特化した試作開発補助金制度や、メディカル産業支援センターを設置し、県内企業が都内の医療機器メーカーと組んで新しい製品開発をしたり、レンタル研究室などを設けて研究開発がしやすい環境を整えたりしています。

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