2015年4月号

EC・決済の新モデル

「道の駅」は未開拓の成長市場 ECで「地方との出会い」を演出

柴田 敬介(XS 代表取締役社長)

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全国1030ヵ所の道の駅には、年5億人が足を運び、その総売上高は3500億円に達する。このプラットフォームに注目し、道の駅に特化した口コミサイトとECを手掛ける関西のベンチャーが今、注目を集めている。

XSは「みちグル」で全国の道の駅の情報をポータル化、特産品の販売にも力を入れている

全国に1030ヵ所ある道の駅。各地で地域の特産品を販売しているが、これまではあまり情報がなく、何が売られているのか、何がおいしいのかなどの情報は、現地に行かなければ知りようがなかった。

おいしいものがあっても、情報がなければ集客につながらない。この「情報の少なさ」と「特産品のおいしさ」に着目し、すべての道の駅をカバーするグルメの口コミサイト「みちグル」と特産品取り寄せサイト「みちグル市場」を立ち上げたのが、大阪のベンチャー・XSの柴田敬介社長だ。

全国の道の駅に営業を展開

柴田社長はSMBC日興証券の出身。なぜ金融業界から、まったく畑違いの分野に転身したのだろうか。

「証券会社で営業をしていた時に、地方の地主で農業をしている方にお会いしました。その方は珍しい産品をつくるなどの工夫をしていたのですが、販路もブランド力もないため農協に卸すしかなく、結局、儲からない。もともと学生時代から起業したいと思っていたので、その話を聞いて、最初は農家と消費者をつなぐプラットフォームをつくろうと考えていたんです」

柴田 敬介 XS 代表取締役社長

しかし、具体的な案はなかなか固まらなかった。そうした時、立ち寄った道の駅で野菜が売れていることを知り、そこにビジネスチャンスを見出した。

「道の駅は直販なので消費者は安く買えるし、生産者も利益を得られます。それにもかかわらず、多くの道の駅はインターネットに対応していませんでした」

ほとんどの人にとって、道の駅は「たまたま立ち寄る」場所であり、それ自体が目的地となるわけではない。インターネットで検索される言葉は、明確な目的を持って打ち込まれることが多く、旅行の計画を立てるときに行きたい場所や宿泊先を調べても、道の駅を調べたりはしない。道の駅は、見過ごされていたマーケットだった。

しかも、道の駅は知られざる成長市場でもあった。2011年に2100億円だった全国の道の駅の総売上高は2013年に3500億円になり、来場者数も2011年の2.2億人から2013年には5億人に伸びている。3500億円という市場規模は、大手が手間とコストをかけて開拓するような大きさではなく、小規模なベンチャーが狙うニッチ・マーケットとして丁度よい規模感だった。

柴田社長は、証券会社時代の同僚とともに2013年8月にXSを設立。営業で培ったスキルを活かして全1030ヵ所の道の駅にひたすら電話をかけて情報を収集し、必要があれば現地を訪問して協力をお願いした。

「みちグル」のサイトが稼働したのは2014年3月、「みちグル市場」がスタートしたのは同年8月だ。この間、すべての道の駅に5回、6回と電話をかけ、訪問した道の駅は200~300にのぼる。実際に事業を始めてみると、予想以上に壁は厚かったという。

「やる気のある運営者がいるところは話が早く、積極的に協力してくれました。一方で、売れなくても良いという雰囲気の道の駅もありました」

このモチベーションの差には理由がある。道の駅の管理・運営には複数のパターンがあるが、自治体主導で設置され、運営を委託された組織が経営責任を負っていないところも多い。そもそも構造的に、運営者側に売上げやサービスの向上、コスト削減へのインセンティブがない仕組みになっているケースがあるのだ。

それでも柴田社長は持ち前の営業力を発揮して50の道の駅と提携することに成功し、「みちグル市場」を開始した。現在の商品数は約200で、インターネットでのやりとりはXSが担い、売れた金額の7%が「みちグル」に入る契約だ。

食との出会いを演出するEC

柴田社長は全国各地の道の駅を訪問し、協力してくれるパートナーを開拓。現地の生産者にも会い、取り扱う特産品の拡充を進めている

「みちグル市場」での一番人気は、スタッフが一押しの道の駅グルメを月1回送付する「みちグル定期便」。送料込みの4000円で、東京などの都市圏では知られていないようなおいしい食材が届く。

「毎回スタッフが現地まで行って、おいしいものを発掘しています。現地の人だから知っているおいしいものは多く、いつも驚きがあります。ユーザーと地方をつなぎ、食との出会いをつくるECだと思っています」

「みちグル定期便」で出会った逸品をもう一度食べたいと思った人は、「みちグル市場」で個別に購入する。このサイクルを拡大するために、今後、定期購買の会員増に力を入れていくという。さらに、地酒と地元の特産品を組み合わせたセットの通販も計画中だ。

事業のもう一つの柱である「みちグル」は、今年に入って口コミ件数が3000件に達した。日本最大の道の駅の口コミサイトとして、「みちグル市場」との相乗効果が期待される。

また、全国の道の駅とつながりを持ち、そこに集う人たちにリーチする手段を持つことは、それ自体が大きな価値を持つ。マーケティング調査を行う場としての活用やコラボレーションによるイベント企画の可能性など、その用途はさまざまに考えられる。

実際、旅行関連、自動車関連などの企業からの問い合わせも増えているという。

人が集うプラットフォームとして道の駅に注目が集まる中で、他社とのコラボレーションを含めて、「みちグル」と「みちグル市場」の可能性は今後さらに広がりそうだ。

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