ないものねだりから「あるもの活用」へ 5万人都市の挑戦

「人口が5~6万人規模の地方創生が一番難しい」と島根県浜田市の久保田章市市長は語る。大学の研究者から市のトップに転身して1年。地域活性化の最前線でどのように取り組んでいるのだろうか。

マリン大橋は浜田市のシンボル

浜田市は、島根県西部の石見(いわみ)地方のほぼ中央に位置する人口58,000人の都市である。平成の合併で5つの市町村が合併し、面積は東京23区全体よりも広い。北は日本海に面し、南は広島県に接している。

周辺には、世界文化遺産として登録された石見銀山や小京都として知られる津和野があるが、浜田市には全国的に有名な観光資源があるわけではなく、また大きな産業もない。あえていえば、漁業が主要産業である。

昨年9月のテニス全米オープン男子シングルスで準優勝した島根県出身の錦織圭選手が、帰国記者会見で「ノドグロが食べたい」と語ったことで一躍有名になった高級魚「ノドグロ」。この主要産地が浜田市である。浜田市の市のサカナ、「市魚」でもある。

「産・学・官」を経験した市長

浜田市市長 久保田 章市 氏

この一見「何もない」田舎町の市長に一昨年10月に就任したのが久保田章市市長である。久保田市長は、浜田市の出身で地元の高校を卒業後、東京大学に進学し、三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に就職。調査部や商品企画に携わり、支店長時代には1000人以上の経営者と面談し、産業界や中小企業との幅広いネットワークを構築した。

その後、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの執行役員を経て法政大学大学院教授へと転身する。大学では、長寿企業の研究や中小企業の後継者問題、地域活性化を研究領域として社会人学生を対象に指導する傍ら、故郷の浜田市にキャンパスがある島根県立大学総合政策学部の非常勤講師としても教壇に立っていた。故郷の地域活性化の方策について若い学生たちに熱弁をふるっていた。

そうしてサラリーマン生活から大学教員となってから6年が経過するなかで、浜田市長が現役を引退することになり、地元の経済界などから請われて市長選に出馬。元市議会副議長と戦い市長となった。銀行員時代の「産」、大学教員時代の「学」、そして市長として「官(公)」に携わり、1人で産学官を経験することとなった。

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