震災からの創造的復興 ゼロから成し遂げた神戸医療産業都市構想

震災からの復興を目指して始まった「神戸医療産業都市」は構想から約15年で日本最大級のバイオクラスターに成長した。「創造的復興」はいかに成し遂げられたのか。

神戸ポートアイランド。国を代表する先端医療研究機関、製薬メーカーや医療機器メーカーなど283社が集積する、日本最大級のバイオクラスターだPhoto by Sean Pavone/123RF

世界中が注目する先端医療研究が、日本で始まっている。世界初のiPS細胞を用いた網膜再生の臨床応用試験だ。理化学研究所発生・再生科学総合研究センターのプロジェクトリーダーで先端医療センター病院眼科部長を務める高橋政代氏が取り組むこの研究プロジェクトでは、2014年9月に、iPS細胞から作製した網膜細胞シートを加齢黄斑変性の患者に移植することに世界で初めて成功。

失明のおそれもある加齢黄斑変性の効果的な治療法として実用化が期待されている。また、2つの企業がこのノウハウを活用し、他人のiPS細胞を用いて網膜を再生し患者の治療に使うための治験を計画中だ。

村上 雅義 先端医療振興財団 専務理事

再生医療の新たな可能性を示すこのプロジェクトの舞台は、神戸市中央区の神戸港内に位置する人工島ポートアイランド。国を代表する先端医療研究機関に加えて、製薬メーカーや医療機器メーカーなど283社が集積する、日本最大級のバイオクラスターだ。しかしほんの15年前には、1社の医療関連企業も立地していない場所だった。

研究機関とメーカーを「橋渡し」

すべての始まりは、1995年の阪神・淡路大震災。神戸市の被害は甚大で、経済的損失は6.9兆円と1年分の市内総生産に相当する金額に達し、1人あたり市民所得は全国平均以下に下落した。

それまで神戸市経済を支えてきた鉄鋼・化学などの重厚長大産業が揺らぐ中で、雇用の確保と経済の活性化を成し遂げるには、新しい産業の創出が不可欠。そこで市が着目したのが医療産業だった。1998年に「神戸医療産業都市」が構想され、産業誘致の場として第二期地区の開発中だったポートアイランドに白羽の矢が立つ。そして当時、神戸市民中央病院長を務めていた、井村裕夫氏(現先端医療振興財団理事長)に構想のとりまとめをゆだね、骨格が固まった。

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