セグウェイはなぜ日本で走れないのか 「安全性」の壁に挑む

ロボットビジネスについて回る、「安全性」という課題。特にドローンやパーソナルモビリティは、規制緩和と法整備がイノベーションの原動力となりうる。欧米各国は課題を抱えながらも前進している。日本はどう変わるべきか。

公道を走る自動運転車。アメリカではすでに複数の州が実験を認めている Photo by Roman Boed

赤旗法からの教訓

日本のロボットビジネスの壁。業界関係者がそれを表現する際に、よく引き合いに出されるものに「赤旗法」がある。

これは1865年にイギリスで制定された、蒸気自動車規制の法律である。郊外では時速4マイル(6.4km)、市街地では時速2マイル(3.2km)という速度制限を設け、さらに自動車の前に必ず赤旗を持った人が歩き、人や馬車に自動車の接近を注意喚起しなければならない、という内容だ。

19世紀前半、イギリスは蒸気自動車の技術でも導入件数でも世界の先頭を走っていた。しかし、赤旗法の登場によって自動車は全く売れなくなり、産業も衰退。フランスやドイツ、アメリカに追い抜かれてしまった。

安全やリスクと、イノベーションをどうバランスするか。これはあらゆる産業の課題と言えるが、特に人と接し、協調するロボットにおいて難しいテーマだ。

アメリカでもロボットの安全性は懸念されており、ドローン使用に対する反対運動も起こっている。ただ、複数の州では自動運転車の公道実験走行に関する法案が通過し、Googleの自動運転車が一般道やハイウェイを走行している。新しい技術はとりあえず実用化して、課題が生まれればその度に対処し、安全問題と何とか折り合いをつけていくという土壌がある。日本のロボット業界関係者からは、「安全性に慎重になるのは当然のこと」という言葉とともに、アメリカの取り組みに対する羨望と危機感の声が聞かれる。

公道で走れないセグウェイ

壁の高さをよく知るのは、パーソナルモビリティ業界の人々だろう。クラウド上の人工知能と連携すれば自動運転も可能であり、ロボット産業の有望市場の一つだが、日本では安全性に関する懸念があり、公道利用までの道のりはまだ険しい。

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