プロ向け「実質本位」のPB商品開発 成熟業界で二桁成長する経営 

成熟化が進み、倒産・廃業・業態転換が相次ぐ業界において、中小企業ながら、年率二桁成長を10年以上続ける企業がある。しかも、非関連な分野への多角化も手掛け、これまた成長軌道に乗せている。それを可能にした要因は何なのか? 経営者の思いとは?

人類の“食料・環境問題”に貢献したい

濵田総一郎社長。武蔵大学卒業後、東武鉄道に勤務。しかし、債務超過となっていた実家の危機を救うため他の兄弟たち共々帰郷し、経営の立て直しに尽力。1993年、独立し、パスポートの経営に乗り出す

「世界の人口は、私が生まれた頃の2.4倍になり、今や90億人に達するのも時間の問題です。そうなれば、全地球的な食糧不足が『待ったなし』で到来します。

それに加えて、化石燃料の枯渇と地球温暖化の進行が世界的に深刻な問題であることは言うまでもありません。2050年までに温暖化に対する解決策を講じないと、人類は地球に住めなくなります。

人類が抱える最も深刻な問題、それが“食料”であり、“環境”なのです。だからこそ、私は、この2つの事業分野で、社会に貢献しようと決めたのです」

そう語るのは、株式会社パスポートの代表取締役・濵田総一郎さん(59)だ。

濵田酒造の創業当時。江戸時代(慶應年間)には焼酎の製造を始めていたが、西郷隆盛ら維新の志士たちを尊敬していた先代が、明治維新にちなんで“明治元年創業”ということにしたという

同社は、江戸時代に淵源を有し明治元年創業の濵田酒造(鹿児島県いちき串木野市)の創業家の次男として生まれた濵田さんが、家業経営から独立し、1993年に“実質創業”した企業である。

資本金9900万円、従業員1752人(連結)で、本社所在地は、神奈川県川崎市。売上は、単体で264億8000万円、連結で330億4500万円(共に2014年3月期)に達する。

「酒&業務スーパー」の店舗展開を基軸に、生鮮食品・デリカ「旬鮮卸市場」、酒専門店「PASSPORT」「ノムリエ」の店舗展開ならびにネット販売、酒類・食料品のデリバリー事業、バナジウム天然水「カリメラの水」宅配事業、太陽光発電システムの販売・設置などを行っている。

収益構造としては、酒・食などの店舗事業を安定的な収益源(CashCow)としつつ、そのベースの上に、太陽光などの環境事業に投資し、それを成長軌道へと乗せていく形だ。

太陽光発電システムに関しては、後述することにして、まず、酒や食料品の事業について見てみると、(図1)にも明らかなように、同社は、首都圏(1都4県)、北陸(3県)、東海(愛知県)で、「ドミナント戦略」を展開していることがわかる。

また、(図2)からは、成熟化が進む同業界にありながら、過去10年以上にわたって、年率2桁成長を続けていることが見て取れよう(今年4月の消費増税後も同様)。

「出店している各地域における『デスティネーションストア』(=買い物の『目的地』となる“お気に入り”の店)になるよう努めています」と濵田さんは言う。

同社が顧客層から支持され、不況下でも高成長を続けてくることができた要因は、筆者の見るところ、次の3点に集約される。

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