青森発「稼げる農業」のアイデア

青森銀行出身を経て、60歳で農業ベンチャー・グランパを立ち上げた阿部隆昭氏。高性能のドーム型植物工場は、国内外から大きな注目を集めている。青森での“気付き”から誕生したビジネスが、イノベーションを起こす。

グランパのドーム型植物工場。ドーム中央で植えた苗が成長にあわせて外周へ移動する、全く新しい栽培方法をとっている

日本の農業は今、岐路に立っている。

農家の高齢化が進み、就業人口の平均年齢は65.8歳で、約270万といわれる農業従事世帯のうち、60%が65歳以上。年々、耕作放棄地が増え続けて39.6万haに達し、埼玉県がすっぽり入る大きさだ。当然、食料自給率は39%と低迷している。

この状況に危機感を抱き、「新しい仕組みで日本の農業を変える」と立ち上がったのが、グランパ代表取締役の阿部隆昭氏だ。同社が開発したドーム型植物工場は、その生産性や安全性の高さで大きな注目を集め、日揮や日立製作所など大手企業からの出資も相次いでいる。

エース銀行マンに転機
海外で知った効率的な農業

阿部氏は青森銀行を50歳で早期退職し、60歳で起業したという珍しいキャリアの持ち主である。何が順調なキャリアを歩んでいた阿部氏を農業に駆り立てたのだろうか?

阿部隆昭 グランパ

「私は青森銀行本店の融資課長を6年務めましたが、その際に痛感したのは、一次産業で稼ぐことの難しさです。全国でも豊かと言われる青森の農業・漁業でさえ、事業者の多くは不良債権を抱えている。これを何とかしたい、と強く思いました」

転機になったのは海外経験だった。「アメリカで1年、欧州で1年勤務した時、週末は各地で郊外の農業を見学しました。アメリカは大規模農業で、欧州は日本と同じような中規模、小規模農業でビジネスとして成り立っていました。特にオランダはあんなに小さい国なのに、農産物の輸出額は世界2位。小さい国でも効率的なやり方があるのだと知りました」

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