大ヒットを生んだ「小さな需要」の発見

東京スカイツリーの制振装置をはじめ、精密機械加工を手がける岩田鉄工所。本業はBtoBだが、近年、電動伸縮杖の開発などでヒットを飛ばし、BtoC市場で躍進する。

高い精密加工技術を誇る岩田鉄工所。多様化するニーズに応えるため、数多くの高精度な設備を備える。その技術力を活かし、ユニークな商品を次々と開発している

柄のボタン操作一つで長さが自在に変えられる電動伸縮杖『伸助さん』が、2010年の発売以降売れている。1本2万円超と高額ながら、「ありそうでなかった便利品」として人気を呼び、その売上げは半年で1億円を超えた。

手がけるのは、岐阜県羽島市で金属・機械加工業を営む岩田鉄工所だ。油圧機器、医療機器、航空宇宙機器、IT機器部品など精密部品の生産を36人の従業員でこなす。東京スカイツリーの制振装置などの機能部品を担当した実績からも、その技術力の高さがうかがえる。

技術力の高さは、遠隔操作可能な五指可動型のロボットハンド『ハンドロイド』などユニークな製品開発にも活かされている。同製品は、人間には入りづらい環境下でありながら、人間の生の手を必要とする作業を行う際に威力を発揮する。

リーマンショックが契機に

BtoBで下請け専門だった同社が、BtoCの商品を手がけるようになったきっかけは、「リーマンショックで生産財が打撃を受けたことだった」と代表取締役の岩田勝美氏は振り返る。

岩田勝美 岩田鉄工所 代表取締役社長

「世界中で設備投資が止まり、生産財の仕事もピタリとなくなりました。売上げも約3割まで落ち込みました。それ以前のITバブル崩壊はなんとか乗り切ることができましたが、この時ばかりはさすがに。そんな時、お付き合いのあった東大准教授から、電動伸縮式立ち上がり補助器を作ってみないかと相談があったんです。以前から設備関連以外のものを自社で作りたいと思っていたので二つ返事で引き受け、開発を手がけるうちに雑談の中から生まれたのが『伸助さん』でした」

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