大学発ベンチャーの成功事例を創出へ

大学発ベンチャーの分野でも、実績を積み重ねるジャフコ。産学連携投資グループを率いる伊藤氏は、支援先の経営にも積極的に関わり、「ITベンチャーのように、大学発ベンチャーにも成功事例が必要」と語る。

伊藤 毅
ジャフコ投資部産学連携投資グループリーダー

日本最大手のベンチャーキャピタル(VC)、ジャフコの投資部産学連携投資グループリーダーを務める伊藤毅氏は、この3月に上場したロボット開発ベンチャー、CYBERDYNEの社外取締役を務めるなど(現在は退任)、数多くの大学発ベンチャーの支援を手掛けている。

もともと東京工業大学大学院理工学研究科の出身で、大学の研究成果があまり実用化されていないことに問題意識を抱いていた。その課題解決に取り組むため、投資の世界に飛び込んだのである。入社後、まずはITベンチャーなどの投資に関わり、起業家を見る目を養ってきた。

「投資するかどうかのポイントは、簡単にいえば、人として魅力があるかどうか。大きなビジョンを描いて、たくさんの人を巻き込んでいける力が起業家には求められます」

多くの起業家との出会いを通じて、伊藤氏は経験を積み重ねた。産学連携投資グループに所属する以前の実績は、「累計のキャピタルゲインは、億単位でプラス」だという。

「目立ったIPOはありませんでしたが、M&Aでの売却は多く、売却済の投資先だけで言うと、プラスのリターンが出た投資先の成功確率は5割を超えます」

大学発ベンチャーの難しさ

そして2008年、伊藤氏は念願の産学連携投資グループに移る。しかし、大学発ベンチャーの世界には、そもそも事業を強力に推進するリーダー自体が不在のことも多い。しかも、伊藤氏が担当するのは、まだ事業の形がはっきりとしていないシード期(創業前の準備検討時期、創業間もない時期)の大学発ベンチャーだ。

「大学には、『自分の技術はすごいから売れるはずだ』と考える研究者が多い。そうした中で、成功する大学発ベンチャーの経営者は、『自分の技術が事業化されないと価値がない』という強い思いを持っています」

そうした投資先を見つけるために、産学連携投資グループでは、論文やプレスリリース、インターネットの情報を丹念にあたるなど地道な作業を繰り返している。

「見込みがあると感じた先生には積極的に会いに行きます。以前の部署では、目安として50社の社長に会って、1件の投資先が見つかるぐらいでした。シード期の大学発ベンチャーの場合、その率はさらに低くなります」

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