時間と空間を超える製品開発

人体の損傷部を補う義手や義足は、体型差のため大量生産できない。3Dプリンターはこの低価格化に寄与すると言われている。3人の技術者が、3Dプリンター義手の開発に挑んだ。

左から東京大学生産技術研究所・山中俊治教授、奈良先端科学技術大学院大学・吉川雅博助教、国立障害者リハビリテーションセンター研究所・河島則天室長

製作コスト5万円の義手今までにない機能美を

「Finch」は3本指のハンドが特徴的な電動義手だ。腕部に埋め込まれた距離センサで筋肉のわずかな隆起を検出し、「対象物をつかむ」「はなす」という直感的な操作を可能にしている。もうひとつの特徴として、試作や実機生産に3Dプリンターが活用されている点がある。

重量は約300グラムと一般的な筋電義手の1/3まで軽量化。さらに積層樹脂材料やマイコンを含めた製作コストは約5万円と、150万円以上する筋電義手に比べ大幅に低コスト化している。今後、製販体制をつくり早期の上市を目指すという。

「Finch」の開発は奈良先端科学技術大学院大学の吉川雅博助教と国立障害者リハビリテーションセンター研究所の河島則天室長の2人で始まった。義手には装飾・能動・筋電の3つの方式がある。現在、圧倒的に多く使われている義手は、見た目を本物の手に似せてある装飾義手だ。

機能性を持たない装飾義手がなぜ選ばれるのか。「外見と機能性を兼ね備えた筋電義手は高価で操作が難しく、機能性を備えるとはいえユーザーの機能充足にまでは至らない。一方で外観が考慮されていない能動義手はあまり若い人に支持されない。消極的な選択の結果、装飾義手が選ばれていると我々は考えています」と河島氏は分析する。そこで「機能性に富み、さらに継続的に使う意欲を持てるデザインを」というコンセプトで開発がスタート。検討の末、「3本指」という従来にない電動ハンドを考案した。

吉川氏と河島氏はプロトタイプ1号機を携え、プロダクトデザイナーでもある山中俊治教授(当時は慶応大学、現在は東京大学生産技術研究所)の元を訪れた。

「これまでに山中先生がデザインされた義足などを拝見して感じた機能美を、是非義手のデザインにも組み込んでもらいたいとアイディアを持ち込みました」。

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