首都地震対策で世界に誇る防災都市へ

国の有識者会議は南海トラフで地震が起きた場合、避難者が950万人にのぼると発表した。東京都は関東大震災・東日本大震災レベルの大地震に備えて様々な対策を進めている。その中から、高度な事前準備が求められる帰宅困難者対策と木密化対策の現状を尋ねた。

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震災当日、都庁内に避難した帰宅困難者。都内では約352万人が帰宅困難者となった(画像提供:総務局総合防災部防災管理課)

未曾有の被害をもたらした東日本大震災。震源から約400キロ離れた首都圏でも大混乱をきたし、交通網の麻痺により帰宅が困難になった人の数は約515万人(内閣府推計)。再び大規模な震災が発生した時、都内で通勤・通学をする人々はどのような行動をとるべきなのか。浮かび上がった課題をもとに、来るべき首都直下地震に備えて東京都の対策が進む。

3月11日2時46分。震度5強の揺れを記録した東京都では、まもなく鉄道の多くが運行を停止。道路ではかつて経験したことのない大規模な渋滞が発生し、バスやタクシーなどの交通機関にも支障が生じた。その結果、人々は帰宅手段を失い、約352万人という帰宅困難者で街中が溢れかえった。スニーカーを購入して自力で自宅を目指し歩き始める人、寒さをしのぎながら交通機関の運行開始を待ち続ける人、家族との安否確認を求めて公衆電話の長蛇の列に並ぶ人。大混乱のなか、各自の判断で非常事態を克服しようと必死に知恵を絞った様子が伺える。

大混乱を助長した帰宅困難者の大量発生

発災当日、多くの帰宅困難者が帰宅を開始し大混乱が生じた。東京都ではその反省を踏まえて「東京都帰宅困難者対策条例」を制定、この4月から施行している。

条例の柱は4つ。まずは、一斉帰宅の抑制だ。「災害時はむやみに移動を開始しない」という基本原則のもと、企業や学校に対して、従業員・学生の施設内待機を促すよう求めることや、3日分の水や食料などを備蓄するよう努力義務を定めている。また、都では、従業員向けの備蓄に加えて、外部の帰宅困難者を受け入れるために10%余分の備蓄を行うよう企業に協力を求めている。実は、震災後の調査で企業や学校にいた人の8割超がその日のうちに職場や学校を離れている。なかには事業所や学校管理者から帰宅の支持が出ていたケースも少なくないことが確認されている。今後は事業者、従業員ともに、「無理に移動せず交通機関の復旧を待つ」という認識を持つことが必要になる。

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