電力改革が促す都市の魅力向上

東日本大震災によって、地域独占的な日本の電力システムの矛盾が露呈したことを踏まえ、東京都は、市場における新電力のシェアを3割にするという具体的な目標を掲げる―猪瀬知事はそう宣言し、従来施策の強化を打ち出している。これまでのノウハウの蓄積はあるのか、今後の具体策はどうか。長期にわたり施策を牽引してきた東京都・環境局長に聞いた。

東京湾岸の老朽化した火力発電所を最新式のガスタービンコンバインドサイクル発電に切り替えていくことで、大きな効率化が図れる(真はドイツのガスタービンコンバインドサイクル発電)

東京都の電力・エネルギーに関するスタンスは2つある―東京都・大野輝之環境局長はそう話す。

「今までのエネルギー政策は、需要があればあるだけ供給する、という需要追随視点から電力を供給していくもの。今後は逆に電力需要をマネジメントする視点に変えなければならないということ。それが1つです。電力の需要をコントロールし、ピークカットやデマンドコントロールを行い、需要のカーブを平準化していきます。東京電力管内の2010年夏のピーク電力が6000万kWと言われますが、それはごく一部の時間帯の話です。ここをカットするだけで、エネルギー設備への投資を減らすことができます。

もう一つは供給サイドのもの。今までは大規模集中型の電源に依存した電力システムが築かれていました。ここで原発事故などのようなトラブルが起きた場合、電力供給全体に大きな影響が出てきてしまいます。そこで、東京都だけではなく、事業者と連携しながら、より分散型の電源システムを構築し、電力の供給主体も、新電力(特定規模電気事業者。従来の電力会社以外の、新たに参入した電力業者)を増やしていきます」。

従来の気候変動対策ともマッチ

東京都・大野輝之環境局長 15年にわたり、東京都の環境政策を牽引。1978年東京大学経済学部卒。79年東京都入庁。都市計画局、政策報道室などを経て、10年より現職

電力システム改革の視点は、電力の安定供給だけではない。気候変動対策の視点も重要だが、3・11以降は、とかく電力の安定供給が重視される傾向が強かった。では客観的に気候変動対策は後退しているのだろうか。「そうではないと思っています。気候変動対策は、何より省エネ。そして低炭素な電力源を増やすことです。この2つの視点で見ると、3・11以降ほど対策が進んだ時期はこれまでにありませんでした。固定価格買取制度(再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、kWあたりの一定価格で電気事業者が買取ることを義務付けた制度)によって太陽光発電などは爆発的に普及が進んでいます」。

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