いつか飛び抜けるための助走

オランダに渡って、はや7ヵ月。大津祐樹は今、もがいている。実力が足りない、と自覚している。それでも決して下を向くことはない。「負けたくない」その思いを胸に刻み、自分を信じ、ピッチを駆ける。

3月の上旬、この時期のオランダにしては珍しい温かな日差しのもと、VVVは試合形式の練習をしていた。大津は味方のパスを誉め、スペースに入り込まなかった選手には「俺が囮の動きをしたんだから、裏に走って来ないと」と要求していた。

「練習中に気付いたことは全て伝えてます。それは監督に対してもそう。自分の主張ばかりでは良くない。もちろん、相手が何を考えているのか聞くのも大事。ただ、自分の意見を言わないのはもっといけない。それを伝えるためにも英語の知識は必要ですし、勉強は欠かさず続けようと思ってます」

ピッチの内外で、大津は積極的にコミュニケーションを取っている。ロクホフ監督も「大津は練習をハードにやっているし、更衣室でもチームメートと馴染んでいる」と観察している。

ただし、今の大津はまだ、レギュラーとは言い難い。今季はリーグ戦23試合で18試合に出場しているが、先発出場は7回。奪ったゴールはわずか1つだ。本人も今は〝壁〟だと感じている。それを乗り越えるためには、先ずは自分の実力を上げること。しかも、絶対に誰もが認めるような実力を。

「オランダ人と比較されているなら、自分はひとつ飛び抜けないと試合に使ってもらえない。極端な話、1分に1点獲る選手を監督が使わない訳がない。先発できないのは、まだまだ自分の実力が足りないから。悔しい気持ちはありますけど、監督のせいにしたり、人のせいにしたりしてはいけない。先ずはポジティブに自分が100%のパフォーマンスを出せるように練習からアピールしないといけない。そう考えてます」

成長につながったドイツでの日々

「自分ができると思わなかったら、自分がそこで壁を作っちゃったら、そこで終わる」

大津のサッカー人生は決してエリート街道を歩んできた訳ではない。最初の大きな挫折は鹿島アントラーズのジュニアユースからユースに昇格出来なかった時。自信があっただけにショックだった。この時ばかりは「サッカーを続けようかどうか」と悩んだが、周囲に急かされながら成立学園高校サッカー部に入ったことで気持ちを切り替えた。

それ以降、大津は柏でのJ2落ち、ロンドン五輪2次予選メンバー落ちといった挫折にも「自分はできる」と信じて乗り越えて来た。

「自分ができると思わなかったら、自分がそこで壁を作っちゃったら、そこで終わっちゃうじゃないですか。自分の可能性を信じない限り上には行けないと思う。どんなときも常にプロになりたいと思っていないとプロにはなれない。そういうものだと思ってます。夢を追わない限り夢はついてこないんです」

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